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2010.03.29

仮面ライダー響鬼 レビュー総論

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 仮面ライダークウガから続いている平成シリーズ群。それらが初代(昭和シリーズ)ファンだった父親、ヒーロー物好きな男の子、イケメン俳優目当ての母親を巻き込んで「家族全員で楽しめる特撮TVドラマ」を確立しつつあったのは周知の事実だが、当作「仮面ライダー響鬼(ヒビキ)」に含んだメッセージを最も届けたかった層は、私のような中途半端なオトナ世代ではなく“明日夢=現代の子供達”であった事を今一度思い起こしてほしい。それを踏まえて読み進めていってもらえれば幸いである。

 制作が発表された当時、主演が細川茂樹氏だと知った時は本当に吃驚した。たとえば前前作の仮面ライダー555(ファイズ)で大役を務めたルーキー俳優 半田健人は、甘いマスクと茶髪ロングのビジュアルと、乾巧(いぬいたくみ)という役名の略称が合わさってキムタクならぬ「イヌタク」と呼ばれたほどの美男子だった。平成シリーズが切り拓いた新境地(且つ象徴的な一面)であるが、響鬼を描くにあたり、スタッフはフレッシュマンを起用せず、ある程度顔が知れていて先入観が構築されてしまっている恐れのあるベテランを敢えて選んだ。平成ライダーでは異例と言える30代にまで年齢を上げることで、アクション面の意義は「子供が憧れる大人のヒーロー」に切り替えたのである。

 当作は「平成の仮面ライダーアマゾン」を意匠に掲げ、徹底的な常識(慣例)打破を実行に移した。先ず仮面ライダーの代名詞ともいえる「ベルト」「変身の掛け声」「バイク」「ジャンピングキック」などの要素を封印。装飾品や必殺技を含めたあらゆる舞台装置を和風に統一し、悪の組織には日本古来の妖怪伝承や怪談故事を取り入れ、従来とは一線を画す「完全新生」を目指した。そうして結実したのが「身の丈をも超える巨大な魔物にRideし、清めの音で退治する假面の戦士」でMasked Riderという世界観だ。
 この決断は私のような濃いファン層には「斬新で良い」と受け入れられた。然し逆に、その綿密な狙いが子供には分かり辛い印象を与えてしまったのである。憧れるはずだった主役ライダー像に関しても、かなり幼い層では「口から炎を吐いたりして敵よりも恐い」と泣いた児童もいたらしい(笑)。 つまり、私のような世代は大金を叩いて玩具は買わないし、子を持つ親でもない限り買ってあげる事もない。当の子供達は当作のあまりの渋さについていけないから同様に消費が拡大しない。我我が好めば好む程に響鬼というヒーロー像は本来届けたかった層から離れていってしまったのだ。
 “大人の鑑賞に堪える特撮ヒーロー”と訳知り顔で論評してきた私達の胸にはあまりにも痛く、且つこれ以上無い程の皮肉な現実であった。

 話は一気に進むが、それらの変化球がじわりと受け入れられてきた物語中盤、驚天動地の事件が起こってしまう。なんと脚本家とプロデューサーが番組を降板するという異例の事態を迎えてしまったのだ。これが原因となって三十之巻から最終之巻までのストーリーがファンの間で賛否両論になってしまうのだが、長い時間はかかったものの自分なりに整理がつき以下のような結論に至った。
 ここからは、響鬼という作品を心の底から愛し、その愛故に傷を負った同志に是非読んでいただきたい。

 最も多く見掛ける批判論は後半を担当した脚本家達 * へのバッシングだが、私としては少し見当違いだと諭させて戴く。何故なら、批判されるべきはその人事を決定した“上層部”(スポンサーサイド)と揶揄される方達だと思うからだ。クリエーターの立場になって想像してみると、降板させられる側にとっても、途中からバトンを渡される側にとっても、苦虫を噛み潰す思いだったに違いない。
 鶴の一声に迎合せず我を貫き通したが故の決別を選んだ御大・髙寺成紀(現 高寺重徳)氏に向け一視聴者として拍手を送る自分と、その気質が故に摩擦が生じたかもしれない根幹スタッフ側の言い分も理解出来る自分がいる。娯楽産業である以上は時としてこういう転換も起きてしまうのだが、それでも矢張生みの苦しみを味わった前期スタッフは何があっても最後まで描きたかっただろうし、自分達の感性で係ってきた担当作ではないものを完結させなければならない責務を背負わされた後期スタッフは、降板組の無念を感じながらの板挟み状態であったはず。更にそこに前期の御大に口説かれた出演者達の複雑な感情が覆いかぶさる。それでも日曜日は来る。そこはプロの現場なのだ。時間が無い最中での大変な製作現場だっただろうなぁ‥‥と察してしまう。

 以上を心に留めながら考察してみるとどうなるか。明日夢とヒビキの関係(当作を理解するなら最初に明日夢を挙げてしかるべきと私は思う)を通して伝えたかったテーマというものは、物語全体で感じとってみれば著しい破綻はしていない事に気付くはずだ。
 特に明日夢とは全く異質の存在として物議を醸したK少年の挑発的且つ自己中心的な言動や行動が意味するものは、「好ましい事ではないが、実在する現代のティーンエイジャー層の投影」(絶えぬ悪意等で係わった犯罪少年も同様)であると同時に、そんな若者に対して「あんなゆとり厨房は鉄拳制裁だろ」と叫んで罵るだけの「ヒビキに近い世代の視聴者」に向けて、それだけが大人としてのベストコミュニケーションではなく、「性格も性別も年齢も関係無く、同じスタートラインで接する事も大切」と示唆した触媒だったと思えるはずだ。

 だから、後半から離れてしまった人は毛嫌いする箇所だけで全否定せずに、ヒビキの視点に立つ事を心掛けて鑑賞してみてほしい。そうすれば、「二十九之巻までの」明日夢に対する接し方と、「最終之巻までの」K少年に対する接し方が、分け隔てなく同等という意味で一貫しているヒビキの人柄に気付けるだろう。そして同時に、何故ヒビキは弟子を育てようとしなかった(出来なかった)のかも紐解けてくる。極端にいってしまうと物語開始時期に至る迄、鬼という生き方を己自身で叩き上げた人生だったからだ。
 自分に厳しい性質というのは、たとえ悪意はなくとも時として集団から孤立する。故に師匠を持たずして鬼となったヒビキにとって、自分が誰かを使役するなんて未来は相応しくないと律したのだろう。背中を見て育つのと「背中しか見えないままで真似するだけ」は似て非なるもの――。十六之巻できっぱりと明日夢の弟子取りを否定した際の心象である。
 人の神経を逆撫でする相手とも真摯に向き合う事。これはとても難しい生き方だし、それが自分よりも年下から発せられた態度ならば尚更である。故にK少年の介入は含蓄深い演出だったのだと今なら思えないだろうか。

 ただ、この時点で全てにおいて素晴らしかった(納得出来た)作品というより、「こういうヒーローものもあったんだよ」というフィルターを通して御薦めしなければならなくなったのは、個人的な本音で言えば残念。 出演者や後期スタッフが語った後日談の中には、“不完全燃焼です。あの終わり方はないよな” 、“許せない。彼の意志を継いでいきたい”、 “なんとかヒビキと明日夢の物語だけは死守させてもらった”などもあったというのだから。

 作品とは生き物であると多くのクリエーターは仰る。加えて、我我が望んだ路線を補完しているように見えても、“ディケイドの響鬼”は何処迄いってもパラレルワールドなのだ。
 仮面ライダー響鬼に冠するとすれば、時間は二度と元に戻せないものだからこその『不遇の“結作”』なのかもしれない。

 * クウガ時代では蝶野という皮肉屋的青年を登場させ、誰からも好かれる主人公との対比を描くなど、歪んだ性格のキャラクターを隠さない特徴がある。一方で「EPISODE 32 障害」「EPISODE 33 連携」などの名エピソードも担当。当作でも四十五之巻は御世辞抜きで良かった。彼等の名誉の為に補足する。

監督:石田秀範、諸田敏
出演者:細川茂樹、 栩原楽人、 蒲生麻由、 神戸みゆき
収録時間:94分
レンタル開始日:2005-08-05

Story
“完全新生”をキーワードに、1月よりテレビ朝日系で放映中の最新「仮面ライダー」シリーズ第1弾。怪童子らに囚われた少女を救うため、さっそうと現れたヒビキは仮面ライダー響鬼に変身し、怪童子に立ち向かう。第1話から第4話までを収録する。 (詳細はこちら
監督:高丸雅隆、諸田敏
出演者:細川茂樹、 栩原楽人、 蒲生麻由、 神戸みゆき、 下條アトム、 布施明
収録時間:93分
レンタル開始日:2006-03-10

Story
“完全新生”をキーワードに、テレビ朝日系で放映中の最新「仮面ライダー」シリーズ第8弾。武者童子を追い詰めた威吹鬼たちの前に突如ツチグモが現れ、武者童子を連れ去ってしまう。第29話「輝く少年」から第32話「弾ける歌」までの全4話を収録する。 (詳細はこちら

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